日本の民話ポータル：あったかふるさと憩いの場

　むがしむがし三人の兄弟太郎と次郎と三郎て言う三人の兄弟がおっ母あど暮していたど。ある時、おっ母あが病気になっていろいろな薬飲ませえでみだげんども、だんだん悪くなるばっかりでもしかしっと死ぬ でなえがはて思ったけど。「おっ母あ何が食って見だえものなえが」て聞いたど。「おら何も食だくねんげんども、ならなし一つ食ってみだえな」て細い声で言ったど。「よし、ならなしがほんじゃ俺もえでくっから待っちえろよ、おっ母あ」て兄の太郎がはげご背負って出がげて行ぐ事にしたど。ところがそのならなしはどこにあるもんだべがなて聞いて見だどごろ、もどらぬ 山にあってたえした元気のつぐうまえ梨で、それ食えばはなじょな病気も治るどがて言わっちえんなだと。だが、そのもどらぬ 山には魔物が住んでいで人間を食ってしまうそうだ。そさ行った人は帰って来らんにえべなて言う話だど。それでも太郎は「おっ母あが食えだえて言うなだものえってくる」て言って出がげて行ったど。太郎は山道をどんどん行ったば大きな岩があってその上に婆さまが座っていだげど。太郎はそれを見て見ぬ ふりしてそごを通り抜けんべとしたところが、婆さまに「どこさえぐ」と声かけらっちゃど。「もどらぬ 山さならなし採りに行ってくる」と言ったど。それを聞いた婆さまは心配そうな顔してゆっくり首を振りながら、「こっからますぐ行ぐど道が三つに別 れだ所に笹が三本立ってる。その笹の言う事をよおっく聞けよ。戻れっちゃカサカサ行げっちゃカサカサて言うがら、行げっちゃカサカサて言う方の道さ行げ世。そしてずうっと行ぐど今度は川があっから、川がザアザア戻れっちゃザアザアて言ったら戻って来いよ」て言ったど。婆さまの話を最後まで聞かねで太郎は「わがったわがった」て生返事してさっさど行ったど。そしてどんどん行ったば道が三つに分かれだ所に笹が三本立ってで、何やらカサカサカサカサ言ってだど。太郎は婆さまの話よっく聞ぎはさんでこねもんだがら、そのカサカサて言うこどなど気にもとめねでさっさど行ったど。ところがそごは戻れっちゃカサカサておしえだ方の道だったど。そしてどんどん行ぐど川があって、川が「ザアザア戻れっちゃザアザア」て言ってだど。さすがの太郎も今度は気にとめでしばらく立ち止まって考えでみだが「いやここまで来たもの戻らんにぇごでは行ぐしかなえ」て川をざぶざぶどこえでったど。すると川の深え所さ足すべって転んで流さっちぇ、やっとの事で川の向こう岸さ着いたど。そしてどんどん行ったば沼があって沼のほとりに大きな梨の木が一本あったど。上を向いて見るど、ざんざらどいっぱいなってだど。「ああこれだ」ど思ってその梨の木さよじ登ってハケゴを枝に引っかけてもごうどした。そうしっど太郎の影が沼さうづったど。ところが沼の水がダブダブダブダブど動いて中がら赤いべろ出して大蛇が太郎に襲いかがって来てぺろりんと飲まっちぇしまったど。家では兄の太郎が来るのを待ってだげんども戻って来なえもんだがら、今度は次郎がハゲゴを背負って出がげで行ったど。そして次郎も山道をどんどん進んで行ったど。そしたば大きな岩があって婆さまが座ってだど。そごで太郎ど同じ事教えらっちゃなだげんども太郎ど同じ事してしまったもんだがら、同じ大蛇にぺろりんと飲まっちぇしまったど。そして兄達の帰りを待っていたがいくら待っても来ないので、今度は三郎がハケゴ背負って出がげだど。そして三郎も山道をどんどん行ぐど大きな岩に婆さまが座ってだど。するど三郎はズガズガど婆さまのそばさ近づいて行って「婆さま婆さまお尋ねします。家の兄達がもどらにぬ 山にならなし採りに行ったきり戻って来なえもんだがら、その様子を知ってえだら教えでもらえだえ」「おおお前は良え息子だ気つけて行って来いよ。兄達はこの婆さまの言う事聞かねがったがら戻って来らんにえぐなったなだ」て言いながら「草の話をよっく聞け。川の話をよっく聞けよ。木の話もよっく聞けよ」て言いながら一本の刀を三郎さ渡したど。三郎は深く礼を言ってどんどんと山道進んで行ったど。そしたば道が三本に分かれた所に笹が三本立ってだ所さ来ただど。三郎はじっと立ち止まって耳を澄まして笹の話を聞いだど。するど「行げっちゃカサカサ」て教えでけっちゃど。そして教らっちゃ方の道さドンドン行ったば今度は川があったど。三郎はまだそこに立ち止まってジッと耳を澄ませて川の話を聞いだど。するど「行げっちゃザアザア行げっちゃザアザア」て教えでげっちゃどそしてどんどんと行ったば沼があって沼のほどりに大きな梨の木があってならなしがざんざらどいっぱいなってだど。そこで三郎はまだ立ち止まって耳を澄ませでよっく聞いたど。するど「東の方は危ないぞ、西の方も危ないぞ、北の方は影映る、南の方がら登って行け」て教えてけっちゃど。ああ南の方がら登って行ぐどええなだなと思って、三郎は梨の木の南の方がら登ってえったど。すると梨の木の枝に見覚えある兄達のハケゴが引っがかってえだど。「ああやっぱり兄達もここまで来たなだな」ど思って、ハケゴかがってた枝さ足つったどごろが三郎の影が沼さ映ったど。そうしっど沼の水がダブダブダブダブと動いだと思ったら、沼の主の大蛇が赤い舌ペラペラ出して三郎に飛びかかって来たど。すると三郎はこの時だと思って婆さまがらもらった刀抜いで大蛇めがけて切りつけだど。そしたば大蛇は真っ二つに切らっちえ死んだど。そして大蛇の腹の奥の方で「三郎や三郎や」て声が聞けだもんだがら、婆さまにもらった刀で大蛇の腹裂いて見だら太郎と次郎が青い顔してフラフラ出て来たど。三郎は兄達にならなしもえで食わせだど。そうしっとみるみる元気になって三人はハゲゴいっぱいならなし採って帰って来ておっ母あさ食わせだど。一つ食べれば一つ食べたほど、二つ食べれば二つ食べたほどみるみる元気担って、元のおっ母あの元気な姿になって、四人でまだ楽しく過ごしたけど。トービント。