昔あったけど。お城の西の方にじじちゃとばばちゃが住んでいだったど。おぼこもいないもんで拾って来た三毛猫をわれのおぼこと思い、めんごがって大事にしていだど。その三毛はかしこくて、畑にゆぐにも田さゆぐのもいつでもついでゆぐし、しぇで行くがったど。
ある日の晩方、外で三毛だあんまり鳴くので戸の口さえって見たれば「あっちゃあえべ、あっちゃあえべ」と言っているように鳴ぐので三毛のあとについて行って見だれば、お城坂の所に乞食が倒れていたのでたまげてこれあ大変と家にもどってじいさんをつっちぇ来て、二人でなじょがして家につれて来て本気であづがっだど。そしたれば乞食は良くなって元気になり皆んなで喜んだど。乞食が言うには「こんなに良くしてもらってほんてにありがたい。何かお礼をしたいが俺何にも持っていないのでお礼のしるしにこっちの家の猫はかしこい猫だから踊り教えっと覚えっかしんにぇ。」と一生懸命に教えたらば上手になったんだど。そしたらいつのこまえに乞食がいなくなったんだと。そんな噂話がぐるりの人、そして隣村の方までにひろがったんだと。「そんだばら、この秋の祭りにはぜひとも町中で踊りを見せだ方がよい」と進められ、猫踊りする事にしたんだど。
この秋の鮎貝のお祭りはほんてにころましく、あっちのざいご、こっちのざいごから、それはそれはいっぱいの見物人の集まるお祭りでな。さあさ、その鮎貝のお祭りが来た。ピイシャラピイシャラ、ドンドコドンドコとはじまった。じいさんとばあさんはむしろを持ち三毛をつれて出かけたど。大町の真ん中あたりにむしろをひろげ、じいさんは音大きくして「めずらしい猫踊りでござーい」と言ったれば、いっぱい見物人が集まったど。猫は赤い着物を着たり手ぬごいかぶったり、とても上手に又面白おかしく踊って見せだど。見物人はどこにもない上手な猫踊りを何べんも所望して見せてもらったど。むしろの上にはお金がいっぱいたまって、じいさんばあさんほんてにたまげだど。こんなにいただけないと辞退したが、「猫にやったんだから」と言われもらって家さ帰ったど。いっぱいお金が入ってじいさんばあさん安泰にくらしたけど。
ほだから困っている人を助けたり親切にしたり、家に飼っている猫など大切にするもんだ。とーびんと。
白鷹町老人クラブ連合会様 「白鷹のとんとむかしとうびんと」より |