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山形県の民話

黒鴨蔵高院延命地蔵のはなし
標準語

 昔し鮎貝に偉い徳の高い坊さん居やったけど。その坊さんは湯殿山の観進の為に米澤からずーっと西山の麓の観進代を通って鮎貝の城下でひと休みしてがら黒鴨の寺に腰を下ろしやったど。黒鴨は湯殿山の参詣道で有り街道には旅篭も二、三軒あり芸者家まで有って、それはそれは賑やかなもんだったど。
湯殿山の途中には大日堂という大きな寺が有って、何千人もの修業僧や行者が修業してござったけど…時が過ぎて時代も変わって寺も火災に遭難て焼げでしまった事だど…その後に大きな樹が育って見上げる程だったと…その大木がら地蔵様が二体彫られたんだど。そしてその内の一体は黒鴨の里に、安置されて大切に祀られる事になったど…子供等が橋の上で遊んで居て誤って川さ落ちでも不思議な事に誰も怪我する人居ねがったど…それでいつからか、生き地蔵と言われるようになったんだど。それもそのはずだ地蔵様あ時々何処かさ見廻りに出掛けだり夜遊びに行がっかったんだど…そうしたある時偉い坊さんは功績が認められて本山から褒美に刀一振り戴く事に成ったげんども都会で行がんにえくて代理の人が受け申して来る事になったど…ところがその刀、預かって側さ置ぐ内あんまり切れそうな刀だもんで切れ味を試して見だぐなったんだど…そして辻斬りを思いついだど…ある日の夜始めっかどって(蚊に刺れボコボコになりながら)薮さ隠っちえ人通るな待っちえだど昔の事だがらあだりは漆黒の暗闇の中だ。時折、蛍が飛んで来て向うの林さ消えだ後はあだりがシーンと静まってだけど…どのくらい経ったが…やっと提灯下げて人来たなて分かったので、エイッヤ-て切りかがったど…ガチッと音したけど。
そしてそこを通った人は命からがら逃げで行って助かったんだど。あどで地蔵様の肩先がら斜めに深い傷あったけど…今その地蔵様はミイラ姿の光明海上人様が里人をお護り下さる黒鴨蔵高院のお庭の御堂に丁寧に祀られて居り年に一度盛大にお祭りが執り行われて居るんだど… とうびんと。

NPOあゆかい 迎田様 
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